医学部6年生の竹下沙希さんと西岡祐一先生の論文がBMC Public Healthに出版されました。
医学部6年生の竹下沙希さんと西岡祐一先生の論文「Novel subgroups of obesity and their association with outcomes: a data-driven cluster analysis」がBMC Public Healthに出版されました。
https://link.springer.com/article/10.1186/s12889-024-17648-1?utm_source=rct_congratemailt&utm_medium=email&utm_campaign=oa_20240109&utm_content=10.1186/s12889-024-17648-1
先日のお知らせでもお伝えしましたが、竹下さんは学生としてもともと基礎の研究室でシングルセル解析などの基礎実験に従事していましたが、その後公衆衛生学教室で研究を続け今回糖尿病内分泌内科のプロジェクトとして、レセプトビッグデータを用いた解析を行い見事に論文まで到達しました。6年生で通常の勉強だけではなく、模擬国連やこのような研究に従事し大きな達成を果たしたことは素晴らしいと思います。
本論文では、レセプトビッグデータを用いて9494名のBMI 35以上の高度肥満を対象とした新たな臨床的分類に挑戦しました。
背景として、高度肥満の患者さんが糖尿病、高血圧、脂質異常症など多くの合併症で困っているケースにはよく遭遇します。一方で高度肥満にも関わらずほとんど合併症のない方や、合併症も様々であることもよく見かけます。今回その不均一性を明らかにするために、レセプトにおける病名、投薬内容、診療コードを用いてバイアスのないクラスター解析を行い、各クラスターの臨床的特徴とその腎予後及び生命予後を明らかにしました。
興味深いことに、高度肥満の症例は独立した7つのクラスターに分類されました。糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管合併症を起こしやすいクラスターやほとんど合併症のないクラスター(いわゆるMetabolically Healthy Obesity(MHO)のグループさらにアレルギーや呼吸器疾患が多いクラスターなどに分かれました。アレルギーや呼吸器疾患が多いクラスターでは代謝異常や心血管合併症が少なく、同じ高度肥満でも背景となる病態が明らかに異なることが示唆されました。
また生命予後については、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管合併症を起こしやすいクラスターは確かに悪かったのですが、驚いたことに生命予後が最も悪いクラスターは高度肥満診断後、医療機関を受診していないクラスターでした。このことは高度肥満を指摘した後に医療機関で精査を行い適切に介入を行うことの重要性を示唆しています。
また心血管合併症を起こしやすいクラスターについては十分な薬物療法がなされていましたがそれでも予後が悪く、今後は代謝改善手術をより積極的に考慮する必要がある可能性を示唆しています。
今回同じ高度肥満においてもそれぞれの臨床的特徴と予後を明確にしたことから、その基盤となる病態の解明やより適切な介入方法などを検討するための重要な情報になると考えています。共同研究者である講座のメンバー、今村教授をはじめとする公衆衛生学教室のメンバーの皆様に改めて感謝申し上げます。
このような解析はまさにビッグデータでしかできないことで、今後の新しい可能性を感じながら講座のメンバーと共に他の疾患にも応用を試みています。
論文は上記のURLで公開されていますので、興味のある先生は是非ご覧ください。