

奈良県立医科大学 糖尿病内分泌内科学講座のホームページにようこそ。
私が教授を拝命して5年間が過ぎました。
この5年の間にさらに講座の仲間が増えました。本年度から専攻医2名が、そして神戸大学より国内留学の形でシニアの先生も1名新たに参加して、彼らのやる気に私自身も多くの刺激を頂いています。講座一同、糖尿病・内分泌代謝疾患のプロフェッショナル、一流の専門医になること、世界最先端の診療、研究、教育を行うという目標を持って一丸となって取り組んでいます。
当科の診療体制としてのチーム制も順調に稼働しています。屋根瓦式の指導体制になるだけではなく、働き方改革にも関連して有給休暇も取りやすくなっています。現在は3チーム体制にしてポリクリ学生も参加した活発なディスカッションが行われています。教室も整備してチームごとのミーティングができるスペースと環境も整いました。
当科では元々糖尿病については経験豊富な先生が多かったのですが、内分泌疾患の紹介患者数も年々増加し、講座の全員が内分泌疾患について多くの経験を積んで随分たくましくなりました。そして今年は、内分泌代謝科専門医2名、日本専門医機構認定の内分泌代謝糖尿病内科領域専門医を3名受験し全員が合格しました。奈良県は元々、糖尿病専門医、内分泌代謝科専門医が非常に少なかったので、奈良県全体の診療レベルの向上にも貢献できたのではないかと思います。また専門医取得はあくまでスタートなので、更なるエキスパートを目指して皆研鑽に励んでいます。
当科の指導は非常に手厚く、日本の大学病院の中でもまれだと思いますが、毎朝8:30から外来新患カンファレンスを私自身も参加して全員で行なっています。最近では関連病院の専攻医の先生もWebで参加してくれています。
そこでは外来、入院、主科、共観のすべての新患患者をディスカッションし、必要な検査、治療方針だけではなく、診断のヒント、紹介状の行間から何を読み取るのかを全員で勉強します。特にまだ外来経験がないあるいは少ない若い先生にとってはベテランの外来の疑似体験ができるとともに、1年で膨大な症例の経験に結びつけることができます。また経験のある先生も一人では判断が難しいケースでも安心して診療ができます。当番の若手の先生たちはしっかり予習することで自分で考え文献を調べ、診療の前に直ちにフィードバックを受けることで、月ごとに成長していることがわかります。特に稀な内分泌疾患などは全員が経験と知識を共有できるという点でも非常に有意義です。
月曜日午後の症例カンファレンスではそれぞれのチームがピックアップした症例について、病態についての学会並みの深い洞察に基づいたディスカッションを行うとともに、内容だけではなくプレゼンや質疑も磨くことができます。プレゼンでは改善点についてすぐにフィードバックを受けることができるので、皆さん以前と比較して見違えるようなプレゼンになってきました。そこでは4週ポリクリの学生さんにもチャレンジして頂いており見事なプレゼンをされる方もいます。
もう一つの特徴は月曜日夜のWeb勉強会です。もともとは女性医師の多い当科では産休、育休中でも学びを続けることができるように、また家庭があって早く帰らなければいけない医師も自宅から参加できるよう20:00-21:00でWebで行なっています。それぞれ症例検討や文献紹介を行い、十分な時間を割いて白熱したディスカッションが行われます。講義を聞いて内分泌代謝学に興味を持った学生さんもたくさん参加して鋭い質問をしてくれています。Webの良い点は距離は関係ないので、関連病院の先生方、またご希望の先生方にも広く参加して頂いています。参加希望の先生はお気軽にご相談ください。
内科医として一人前になるためにはきちんとしたプレゼンとともにしっかりとしたサマリーを作成できることが重要です。当科では専門医取得に必要なサマリーの指導体制も整っています。そして学会発表、論文作成を通じて真の実力を養っていきます。
昨年の専攻医の先生たちも1年間で見違えるように逞しくなり奈良県総合医療センター、南奈良総合医療センターなど関連病院で活躍しています。そして今年から当科の関連病院として市立奈良病院が加わりました。石井均先生と池芙美香先生が常勤医として赴任し活躍しています。市立奈良病院は世界遺産の東大寺や春日大社も近く絶好の位置にあり、研修医の人気も高い病院です。
火曜、金曜夕方には研究カンファレンスを行なっています。研究に従事していない先生、当科に研究に興味がある学生さんも自由に参加できます。私たちの現在のプロジェクトとして、主に内分泌代謝疾患を対象にしたレセプトビッグデータ研究を中心に公衆衛生学講座との共同で行っていますが、基本的には症例やクリニカルクエスチョンを大切に深く掘り下げて病態を解明するための臨床、基礎研究など様々なスタイルの研究を行ない、Physicianとしての知識とセンスも磨けるような内容です。
昨年度は英文論文としてメンバーのレセプトビッグデータを用いた「免疫チェックポイント関連1型糖尿病の発症リスク」「健康診断におけるeGFR CVからの透析リスク予測」などガイドラインを書き換えるような論文を出版することができました。さらに高橋教授のライフワークの一つである抗PIT-1下垂体炎、傍腫瘍自己免疫性下垂体に関する重要な論文「免疫チェックポイント阻害剤関連下垂体炎としての抗PIT-1下垂体炎」も出版され、Nature Rev Endocrinologyでも取り上げて頂きました。さらに高橋教授のクッシング症候群についての包括的な総説がNature Disease Primerに出版されました。
今年度はこれまで入念な準備を進めてきたさらに大きな研究プロジェクトとして日本人悉皆データである1億4000万人のNDBを用いた解析を始めその成果も出始めました。このデータは日本人全体の疫学という意味でも重要です。
当科のactivityの証左として、2025年5月の糖尿病学術集会では「レセプトビッグデータを用いた免疫チェックポイント阻害薬関連1型糖尿病の発症リスクと癌種の関連の解明」「日本人悉皆ビッグデータNDBを用いた1型糖尿病合併妊娠周産期合併症の実態解明」「日本人悉皆ビッグデータNDBを用いた1型糖尿病罹患率の解析」「レセプトビッグデータ解析によるCOVID-19罹患後の1型糖尿病発症リスクの解明:インフルエンザ罹患後との比較」「糖尿病患者のHbA1c値の認識と合併症、医師の関わり方との関連の解明」を発表します。
6月の内分泌学会総会では「レセプトビッグデータを用いた免疫チェックポイント阻害薬関連内分泌異常の発症リスクと癌種の関連の解明」「日本人悉皆ビッグデータNDBを用いた1型糖尿病のリアルワールドの解明」「日本人悉皆ビッグデータNDBを用いた先端巨大症のリアルワールドデータ」、他にもDeSCデータベースを用いた「レセプトビッグデータ解析による副腎クリーゼのリアルワールドデータの解明」「レセプトビッグデータ解析によるCushing症候群の病態解明」「レセプトビッグデータ解析によるCOVID-19罹患後の甲状腺疾患発症リスクの解明:インフルエンザ罹患後との比較」、さらにJ-PAS2の共同研究「AVSによる片側コルチゾール自律分泌の局在判定への影響についての検討」、症例報告として「肺塞栓症を契機に診断し免疫再構築症候群を回避できた副腎皮質癌によるCushing症候群の一例」、「RET遺伝子変異によると考えられる両側性褐色細胞腫の母娘例」を発表します。
そして今年は初めて、紙谷先生、尾崎先生、勝又先生の3名がサンフランシスコのENDO2025で発表します。
当科ではまず内科医として一人前になって総合内科専門医を取得して頂くための研修カリキュラムを用意しています。さらに糖尿病だけではなく多くの内分泌代謝疾患もプロフェッショナルに診療できるエキスパートになるために、全国でも有数の手厚い指導体制を構築しています。色々なキャリアパスを目指す学生・先生方のお手本になるメンター、ロールモデルが存在します。そして関連病院の人事等もできるだけ本人の希望や家庭の事情も配慮しながら長期的視点でサポートしております。もちろん世界に発信する研究にチャレンジしたい先生も歓迎です。私たちと教科書やガイドラインを書き換えるような研究をしてみませんか?長期のキャリアパスとしての講座への参加だけではなく、枠があれば1-2年の短期間の研修や国内留学も歓迎します。
医局はアットホームな雰囲気で、子育て中の女性医師も多く活躍しており、何よりも和気藹々と楽しく学ぶことをモットーにしております。せっかく仕事をするのであれば、コルチゾールやアドレナリンではなく、オキシトシンやセロトニンが分泌されるような環境で楽しくやりがいを持って取り組みませんか?
糖尿病・内分泌代謝学に志を持った若い先生方を心から歓迎いたしますので、どうぞお気軽にご連絡ください(dm840〈at〉naramed-u.ac.jp)。
奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学
教授 高橋 裕