教授挨拶

教授 高橋 裕

奈良県立医科大学 糖尿病内分泌内科学講座のホームページにようこそ。
私が教授を拝命して早くも4年間が過ぎました。

この4年の間に講座の仲間が増えました。チーム制も順調に稼働しています。本年度から専攻医2名が、そして大学院生も1名新たに参加して頂き、彼らのやる気に私自身も多くの刺激を頂いています。講座一同、糖尿病、内分泌代謝疾患のプロフェッショナル、一流の専門医になること、世界最先端の診療、研究を行うという目標を持って一丸となって取り組んでいます。

当科では元々糖尿病については経験豊富な先生が多かったのですが、内分泌疾患の紹介患者数も年々増加し、講座の全員が内分泌疾患について多くの経験を積んで随分たくましくなりました。そして今年は日本専門医機構認定の内分泌代謝糖尿病内科領域専門医を4名受験し全員が合格しました。奈良県は元々、糖尿病専門医、内分泌代謝科専門医が非常に少なかったので、奈良県全体のさらなる診療レベルの向上にも貢献できたのではないかと思います。

当科は診療体制としてチーム制をとっています。そのことによって屋根瓦式の指導体制になるだけではなく、働き方改革にも関連して有給休暇も取りやすくなっています。現在は3チーム体制にしてポリクリ学生も参加した活発なディスカッションが行われています。当科の指導は非常に手厚く、日本の大学病院の中でもまれだと思いますが、毎朝8:30から外来新患カンファレンスを私自身も参加して全員で行なっています。そこでは外来、入院、主科、共観のすべての新患患者をディスカッションし、必要な検査、治療方針だけではなく、診断のヒント、紹介状の行間から何を読み取るのかを全員で勉強します。特にまだ外来経験がないあるいは少ない若い先生にとってはベテランの外来の疑似体験ができるとともに、1年で膨大な症例の経験に結びつけることができます。また経験のある先生も一人では判断が難しいケースでも安心して診療ができます。当番の先生たちはしっかり予習することで自分で考え文献を調べ、診療の前に直ちにフィードバックを受けることで、月ごとに成長していることがわかります。特に稀な内分泌疾患などは全員が経験と知識を共有できるという点でも非常に有意義です。

月曜日における症例カンファレンスではそれぞれのチームがピックアップした症例について病態についての深い洞察に基づいたディスカッションを行うとともに、内容だけではなくプレゼンや質疑も磨くことができます。プレゼンでは改善点についてすぐにフィードバックを受けることができるので、皆さん以前と比較して見違えるようなプレゼンになってきました。そこでは4週ポリクリの学生さんにもチャレンジして頂いており見事なプレゼンをされる方もいます。もう一つの特徴は月曜日夜のWeb勉強会です。もともとは女性医師の多い当科では産休、育休中でも学びを続けることができるように、また家庭があって早く帰らなければいけない医師も自宅から参加できるよう20:00-21:00でWebで行なっています。それぞれ症例検討や文献紹介を行い、十分な時間を割いて白熱したディスカッションが行われます。講義を聞いて内分泌代謝学に興味を持った学生さんもたくさん参加して鋭い質問をしてくれています。Webの良い点は距離は関係ないので、関連病院の先生方、またご希望の先生方にも広く参加して頂いています。

内科医として一人前になるためにはきちんとしたプレゼンとともにしっかりとしたサマリーを作成できることが重要です。当科では専門医取得に必要なサマリーの指導体制も整っています。そして学会発表、論文作成を通じて真の実力を養っていきます。昨年の専攻医の先生たちも1年間で見違えるように逞しくなり奈良県総合医療センター、南奈良総合医療センターなど関連病院で活躍しています。

火曜、金曜夕方には研究カンファレンスを行なっています。研究に従事していない先生、学生さんも自由に参加できます。私たちの現在のプロジェクトとして、主に内分泌代謝疾患を対象にしたレセプトビッグデータ研究を中心に公衆衛生学講座との共同で行っていますが、基本的には症例やクリニカルクエスチョンを大切に深く掘り下げて病態を解明するための臨床、基礎研究など様々なスタイルの研究を行なっています。昨年度は英文論文としてメンバーの「免疫チェックポイント阻害薬関連1型糖尿病と下垂体炎の合併例」「パシレオチドが著効したクッシング病」「COVID-19ワクチンによる副腎クリーゼ」(全米内分泌学会副腎に関する代表論文に選出)などの症例報告やレセプトビッグデータを用いた「抗甲状腺薬による無顆粒球症の病態解明」「高度肥満患者の不均一性と生命予後」などガイドラインを書き換えるような論文を出版することができました。さらに高橋教授のライフワークの一つである抗PIT-1下垂体炎、傍腫瘍自己免疫性下垂体に関する重要な論文も出版され、台湾内分泌糖尿病学会のプレナリー演者にも招待されました。今年度はこれまで公衆衛生学教室のご協力のもと入念な準備を進めてきた1億4000万人のNDBを用いた解析をいよいよ始め、さらに大きなプロジェクトにチャレンジしていきたいと思います。

当科ではまず内科医として一人前になって総合内科専門医を取得して頂くための研修カリキュラムを用意しています。さらに糖尿病だけではなく多くの内分泌代謝疾患もプロフェッショナルに診療できるエキスパートになるために、全国でも有数の手厚い指導体制を構築しています。色々なキャリアパスを目指す学生・先生方のお手本になるメンター、ロールモデルが存在します。そして関連病院の人事等もできるだけ本人の希望や家庭の事情も配慮しながら長期的視点でサポートしております。もちろん世界に発信する研究にチャレンジしたい先生も歓迎です。私たちと教科書やガイドラインを書き換えるような研究をしてみませんか?長期のキャリアパスとしての講座への参加だけではなく、枠があれば1-2年の短期間の研修や国内留学も歓迎します。

医局はアットホームな雰囲気で、子育て中の女性医師も多く活躍しており、何よりも和気藹々と楽しく学ぶことをモットーにしております。せっかく仕事をするのであれば、コルチゾールやアドレナリンではなく、オキシトシンやセロトニンが分泌されるような環境で楽しくやりがいを持って取り組みませんか?糖尿病、内分泌代謝学に志を持った若い先生方を心から歓迎いたしますので、どうぞお気軽にご連絡ください(dm840 〈at〉 naramed-u.ac.jp)。

奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学
教授 高橋 裕