神戸大学浦井先生、甲南大学井口先生、高橋教授の総説がCommentとしてNature Review Endocrinologyに出版されました。

神戸大学浦井先生、甲南大学井口先生、高橋教授の総説がCommentとしてNature Review Endocrinologyに出版されました。

https://rdcu.be/ebxfd

高橋教授のグループが神戸大学のメンバーと長年取り組んで確立した新たな疾患概念「抗PIT-1下垂体炎」が免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎として起こりうることを報告したものです。

現在免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎では抗CTLA-4抗体によるものと抗PD-1/PDL-1抗体によるものでは明らかに臨床像、機序が異なりますが、いずれもACTH欠損に伴う中枢性副腎不全をきたします。抗CTLA-4抗体関連下垂体炎ではACTHに加えてTSHやLH/FSH分泌低下を伴います。稀にACTH欠損を伴わないTSH欠損をきたす症例があり、その中でTSHに合わせてGH, PRL分泌低下を伴う「抗PIT-1下垂体炎」が起こることを報告しました。

「免疫チェックポイント阻害薬関連抗PIT-1下垂体炎」をきたした2例はいずれも抗PD-1抗体投与後にTSH, GH, PRL欠損をきたし、血中に抗PIT-1抗体、PIT-1反応性T細胞を認め確定診断されました。またそれぞれの腫瘍でいずれも異所性PIT-1発現を認めました。

今回の報告は高橋教授のグループが提唱した抗PIT-1下垂体炎、一部のACTH単独欠損症、抗PD-1/PDL-1抗体関連下垂体炎を包括する新規疾患「傍腫瘍性自己免疫性下垂体炎」の概念を支持するものです。いずれも共通の機序として腫瘍における異所性下垂体抗原(PIT-1, POMC)の発現とそれに伴う免疫寛容の破綻、細胞傷害性T細胞による特異的下垂体前葉細胞の傷害が起こり特異的ホルモン欠損をきたします。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37045779

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34876362

近年免疫チェックポイント阻害薬の処方増加により代表的な内分泌irAEである下垂体炎も日常診療でよく遭遇するようになりました。中枢性甲状腺機能低下症を見てもレボサイロキシンを補充して経過を見ている場合が多く、本病態が見逃されている可能性も高いので、中枢性副腎不全を伴わない中枢性甲状腺機能低下症を見たら「免疫チェックポイント阻害薬関連抗PIT-1下垂体炎」を疑ってGH, PRL, IGF-Iを測定する必要があります。

この報告に至る過程では多くの神戸大学のメンバーの多大なる貢献がありました。この場をお借りして心から感謝いたします。

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