紙谷史夏先生の論文” Antithyroid drug-induced leukopenia and G-CSF administration: a long-term cohort study”がSci Repに出版されました。
紙谷史夏先生の論文” Antithyroid drug-induced leukopenia and G-CSF administration: a long-term cohort study”がSci Repに出版されました。
この論文はレセプトビッグデータを用いて、抗甲状腺薬を投与されたバセドウ病の患者さん12491人を最長6年間の観察期間で白血球減少及びG-CSF投与のリスクを明らかにしたものです。これまでの多くの報告は専門病院単施設における比較的短期間のデータが主だったのですが、今回初めてリアルワールドにおける長期的リスクも含めて明らかにしました。
これまでの報告では最初の3ヶ月が白血球減少のリスクが高いというものだったのですが、今回の解析でカプランマイヤー解析を行うと72日までとそれ以降で明らかにリスクが変わることを示しました。白血球減少、G-CSF投与が必要になるリスクは72日まではそれぞれ千人年あたり37.2(患者割合では0.7%)、8.0(0.2%)と比較的高頻度に起こりますが、それを過ぎると約10分の1に低下しそれぞれ千人年あたり3.1、0.7に減少し少なくとも6年は持続することが明らかになりました。また長期中断後の再投与においても同様のリスクであること、MMI, PTUいずれも15mg、150mgを越えるとリスクが増えることを示しました。
これらの結果は白血球減少の副作用への要注意期間は開始後72日間で良いこと、その後リスクは大きく減るが持続すること、中断期間があり再投与した場合には最初は同様の注意が必要なことを明確に示しており、今後ガイドライン等に反映されることが期待されます。
査読に時間がかかった上に4人のレビューワーから多くの指摘を頂き苦労しましたが、臨床的に大きな意義のある論文になりました。粘り強く対応した紙谷先生、西岡先生、おめでとうございます。
Sci Repはオープンジャーナルですのでご興味のある先生はどうぞご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37935745/