高橋教授の長年の研究テーマである抗PIT-1下垂体炎について新たな病態を報告する論文が出版されました。
これは神戸大学の大学院生である浦井伸先生が長年の努力を実らせてEur J Endocrinologyに出版されたものです。抗PIT-1下垂体炎、傍腫瘍自己免疫性下垂体炎の疾患概念の確立とともに新たな病態を報告することができました。本当におめでとうございます。
この論文ではこれまで診断された9例の抗PIT-1下垂体炎の臨床的特徴、抗体価、疾患感受性HLA、さらに異所性PIT-1発現の病態について詳細な検討を行いました。
その結果
- 全ての症例でGH, PRL, TSHの極めて低値を認めること
- 下垂体は軽度の萎縮あるいは正常
- 4例が胸腺腫、5例はその他のさまざまな悪性腫瘍による
- いずれも腫瘍にPIT-1が異所性に発現しているが、タンパクの存在様式が胸腺腫、悪性リンパ腫とその他の一般の腫瘍が異なること
- HLA-A*24:02 、A*02:06 が疾患感受性のHLAであること
- 1例では免疫チェックポイント阻害薬投与後に発症しており、いわゆる免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎としても発症しうること
- このことは免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎ではほとんどで中枢性副腎機能低下症を呈しますが、それを認めず中枢性甲状腺機能低下症を呈した場合には本疾患を疑ってGH, PRLの測定が必要であることを意味します。
高橋教授が神戸大学の仲間、そして多くの共同研究者と共に抗PIT-1下垂体炎をという新たな疾患を発見し、さらに一部の免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎、ACTH単独欠損症も同様の機序で発症する傍腫瘍症自己免疫性下垂体炎という新規疾患概念に結びついた一連の研究の要素が今回の論文には詰まっています。
浦井先生の研究を支え続けた井口先生をはじめ神戸大学のメンバー、今回の共同研究者である飯田先生含め関係の先生方に心から御礼を申し上げます。そして私たちはこのような難病に苦しむ患者さんを救うためにこの新たな病気について、さまざまなアプローチを用いてさらに研究を発展していきたいと思います。