若手医師の声
井上 穂香
私は医学生の頃から内科系疾患に興味を持っていました。病状や検査結果から、”目に見えない病態”を突き止めるプロセスを面白いと感じたのがきっかけです。
糖尿病内科では、患者さんの病状だけでなく、性格や生活背景など多方面からのアプローチを通して、本人と共に治療方針を作り上げていくような医療を提供しています。糖尿病治療薬は常にアップデートされ続けており、その種類もかなり豊富ですが、個々の病態やライフスタイルに適した処方を考えていく作業にも、科特有の面白みがあります。
内分泌内科では、負荷試験で病因を緻密に探っていく過程や、適切な治療によって劇的な病状改善を得られる点が魅力的です。近年では免疫チェックポイント阻害薬の普及に伴いirAEの発症頻度が増えており、こうした点からも年々需要が高まってきている分野だと感じます。初期研修中には進む診療科を散々迷ったわけですが、こうした魅力に触れる機会が多々あり、最終的には当科を選択いたしました。
県外での大学卒業および初期研修を経て、地元の奈良県に戻ってきた形となりますが、とても温かくアットホームな雰囲気の医局で、知識の共有や相談等いつでもしやすい環境です。チーム制での病棟管理、豊富な症例カンファレンス、自宅から参加できるWeb抄読会など、手厚い指導体制も整っており、このような場所で勉強させて頂けることに、感謝でいっぱいの日々です。
森口 拓磨
私が糖尿病・内分泌内科を目指した理由の1つは健康寿命が非常に重要と考え、そのためには糖尿病の適切な管理を行い、合併症の発生を抑制することが大切であると感じたためです。
糖尿病は現在、成人の10人に1人が罹患しており、5人に1人が予備軍といわれる病気です。
合併症としては神経障害、網膜症、腎症だけでなく脳梗塞や心筋梗塞や壊疽などがあり、ありとあらゆる病気の発症リスクを上昇させます。
糖尿病治療の本質は患者様の生活環境や食事・運動習慣を聞き、寄り添いながら1人1人に合った方針計画を立て実行していくことにあり対話や共感が重要です。AIの発展が凄まじく今後の医療に多くの面で適応されていくと考えますが、一方で患者様の行動変容を起こすのはAIには困難であり良好な医師患者関係が重要であることにも魅力を感じました。
また内分泌は血液検査や負荷試験の結果を正確に理解することが複雑で専門的な側面もありますが適切な治療により劇的な改善を認める分野でもあります。高橋教授を中心にたくさんのスタッフの先生から手厚くご指導頂ける点も当科の魅力です。活発なカンファレンスが行われており、チーム全員で疑問をぶつけ理解を深めていける素晴らしい環境がありますので、是非一緒に学び、より良い医療を提供していければと思います。
田中 俊志
私が糖尿病内分泌内科に入局した理由は、臨床と研究それぞれにあります。
臨床の魅力は、治療法の正解がひとつではなく患者さんにあわせた治療を組み立てることが重要な糖尿病と、診断ができると治療方針はおのずから決まるものの診断が難しい他の内分泌疾患をいずれも診療できることです。また、特に糖尿病診療では患者さんといかに向き合えたのかが、客観的なデータとして治療効果に現れることも魅力的です。恥ずかしながら私自身もダイエットには難渋し、食いしん坊で、持病のアトピー性皮膚炎のステロイド外用も忙しいとさぼりがちになるなどとても患者さんに指導できる立場ではありませんが、しかしだからこそ難しさを実感した上で共に悩み改善策を考えていくことができればと考えていますし、そうやって向き合っていくことにやりがいを感じます。
研究分野では、いずれの分野もホルモンが関わり客観的なデータ(検査値など)に基づきますが、細胞が3D構造をとって機能する「臓器」よりも、ホルモンや遺伝子が機能する「細胞」を相手にするところはトランスレーション研究につなげやすい点で魅力的です。また、頻度の多い糖尿病などではデータベースなどを駆使した多症例の集積で疑問を解決する手法が、頻度の少ない内分泌希少疾患ではひとりひとりの患者さんの病態を深める手法がそれぞれ有効ですが、そのバランスも魅力的です。
では、なぜ当教室に入局したのかですが、それは一度でも当科に見学に来ていただければ語るまでもないと考えますので割愛させていただきます。そして、重要なことですが、上記で述べた魅力は入局後の今も変わらず感じつづけており、もう一度選びなおすとしてもやはり当科に入局すると思います。皆様の見学もしくは医局説明会への参加、そして入局を心よりお待ち申し上げております。
高橋 菖
糖尿病は疑いも含めると日本人の5人に1人と言われており私たちの身近な病気であります。しかし、「よくある病気」と軽く考えられ治療が遅れたり十分に治療されていないケースもあります。また、血糖値だけ下げれば良いと考えられることもありますが糖尿病内科として研修する中でそうではないことを学びました。なぜ血糖値が上がってしまうのか、食事だけ直せば良いのか、周りの環境が与えている悪影響はないのかなどを一緒に考えていく必要があるからです。医療従事者がその患者さんの背景を深く理解するところから治療が始まることを学び、日々実践を重ねています。 内分泌疾患は患者数が少ないため「よく分からない病気」と見過ごされているケースが想像よりも多いと感じます。私たちがより専門的な知識を身に付ければ救われる方々がたくさんおられると考えると勉強するモチベーションになります。そして、髙橋裕教授という日本の内分泌のスペシャリストの近くで勉強できる環境に感謝しながら日々研修しています。この素晴らしい環境でたくさんの方々と出会いより多くのことを学んでいきたいです。
医員 河邉 良枝
私は再受験で奈良医大に入学し6年生のときに出産し今は1児の母です。初期研修1年目から基礎系研究室の大学院へ進学し、同時に奈良医大で初期研修を開始しました。2年間の初期研修期間中に、子育てと後期研修の両立ができ、しかも面白くてやりがいがある診療科を探し、2年目の秋にようやく糖尿病・内分泌内科に出会いました。当科で扱う疾患は内科の中でも治療法があるものが多く、しかも治療によって患者様の長期的な予後を大きく改善することができます。糖尿病は患者様との対話の中でそれぞれの背景を考慮しながら血糖値を改善できる点を一緒に探し、将来生じうる糖尿病による合併症を減らしたいと患者様自らが感じて行動に移していただけるように陰ながらサポートすることが大切で、難しさと面白さを併せ持つ分野であると感じております。また内分泌領域ではちょっとした不調とも言うべき症状の裏に隠れる内分泌疾患を見逃さないように注意を払い、負荷試験などを駆使して原因を一つ一つ検証していく面白さがあります。これら全く特徴の異なる2つの疾患群を同時に経験できるのも糖尿病・内分泌内科の魅力の一つです。 当科は小さな診療科ですが,高橋教授を筆頭に良き指導者が沢山おられ、困ったことがあれば誰にでもすぐに何でも相談できる環境があります。また、子育てをしながら臨床と研究に取り組む女性医師も沢山おられます。私自身も子供を保育園に預けながら日中は忙しくしていることもありますが、このような環境で勉強させていただくことができてとても幸せに感じております。
医員 出口 泰地
糖尿病は国民病であり、動脈硬化に与えるリスクは加齢15年分に相当するとも言われています。私は、臨床研修病院でその事実を痛感しました。生命予後に直結する心血管疾患で救急搬送された患者様の多くが糖尿病を合併していたのです。そして、急性期治療を経た患者様の中には、元通りの生活に戻ることができない方が多数存在することを目の当たりにしました。そのとき、一次予防の重要性をあらためて実感し、糖尿病を真剣に学ぼうと決意しました。また、内分泌疾患に関しては、ホルモンの働きが精神症状に影響していることが衝撃で、大変興味深いと思うようになりました。甲状腺機能異常が精神症状に与える影響は有名ですが、ほかにも褐色細胞腫や周期性クッシング症候群などの様々な内分泌疾患が人の精神に干渉しています。精神疾患を抱えている患者様の中に、現代の内分泌医療で根本的な解決が可能な方が多数含まれているかもしれません。患者様の心の症状にも耳を傾け、適切な内分泌学的検査・治療を実施し、役立つことができればと考えています。最後に、奈良県では糖尿病・内分泌内科専門医が不足しており、当医局はこれからの活躍がとても期待されています。ともに研鑽を積める仲間がたくさん入局してくれると嬉しいです。
医員 松本 直也
私は患者さんと向き合っていくという点で糖尿病内分泌内科に興味がありました。内科では、他に呼吸器内科も考えており、最後まで迷いました。呼吸器内科では、気胸、呼吸不全など急性期疾患から、気管支喘息、肺気腫など慢性期疾患まで幅広く診ることができる点が魅力的でした。研修医の時に当科をローテートさせて頂いた際に、同じ糖尿病の方でもインスリンの抵抗性や食事量に合わせたオーダーメイドの治療を行っており、患者さんによって糖尿病の疾患への思いが異なるため、患者さんと多くのことを話し、治療を考えていく必要があることを知りました。また、内分泌の患者さんも担当しましたが、検査結果や身体所見から内分泌異常を疑い、正しく診断し治療介入できれば、症状が改善することに魅力を感じました。ホルモンは目に見えないながらも全身の臓器に影響を与えており、内分泌異常では症状も非特異的なことが多いため複雑ですが、複雑だからこそ専門性が高く、重要な分野だと感じました。じっくりと患者さんと関わり、治療を一緒に考え、何が原因で症状が出ているのか深く考えていくところが自分と合っていると感じ、最終的に当科を選びました。 当科では、朝のカンファレンスで新しい患者さんの治療方針を相談したり、勉強会で学んだことを共有したり、いつでも相談できる環境が整っています。子育てをしながら働いている先生も多く、ワークライフバランスも取りやすいところも魅力的です。 他科との関わりも多く、ステロイド使用や周術期、周産期の血糖管理や、最近では免疫チェックポイント阻害剤使用に伴う内分泌異常(irAE)なども注目されており、今後さらに需要の高まる分野だと考えています。この数カ月でも非常に多くの、かつ複雑な症例を経験し、そのたびに多くのことを学ぶことができました。まだまだ未熟ですが、今後も患者さんから学びながら日々精進したいと思います。
医員 池 茉美香
私は元々内分泌疾患に興味がありました。一見不定愁訴の様な非特異的な症状が多い中で、ひとたび正しく診断がつくと治療で症状が速やかに改善する点に魅力を感じたからです。内科の中では血液内科と最後まで迷いました。血液内科は移植などのダイナミックな治療法があり、内科的に治療が完結できるという点で魅力的でした。また糖尿病内分泌と共通して、慢性的な経過をたどることも多く患者一人一人とじっくり向き合える点や、特別な手技を身につける必要なく、臨床症状や各種検査から診断できる点も良いと思いました。散々迷いましたが最終的には当科を選びました。
内科的治療は外科手術の様にドラマティックな変化はなさそうな印象がありましたが、様々な症例を通して内服調整や簡便な手技だけでも患者の容態改善に大きく貢献する力があるのだと感じました。そんな中でも当科の魅力は臨床で目にする機会が多い疾患を扱っており、汎用性が高い分野であること、また一見治療は簡単な様に見えて実に奥が深いことです。さらに最近であれば悪性疾患に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用でirAEを起こし1型糖尿病や下垂体機能低下症などを発症する例も増えており、共観を通して他科との関わりが多い点も魅力だと思います。
当科では2020年4月から内分泌疾患も診ていますが、医局の雰囲気ははとてもアットホームで、各自学んだ知識をみんなで日々共有しています。内科新専門医制度も始まっていますが、当科の疾患は症状や病態も多様で、様々な疾患群で登場します。この数ヶ月だけでも多くの症例を経験することができ、充実した毎日を過ごしています。科の特性上あまり急変が多くなく、日中に検査結果を見て今後の治療方針を立てられることが多いので、ライフワークバランスがとりやすい科でもあります。医師として体力的にも技術的にも細く長く携わることができる科であり、選んで良かったなと心から感じている日々です。
医員 新居田 泰大
私が糖尿病・内分泌内科に入局しようと思った理由の1つは、糖尿病治療の予防医学的な面に魅力を感じたからです。糖尿病がリスク因子となる合併症は多彩であり、糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて健康寿命が短いとされています。また糖尿病の治療目標には「健康人と変わらない生活の質(QOL)を保つ」と掲げられています。専門知識を持って糖尿病患者の良質な管理を行うことで合併症の発症やADLの低下を抑えることができ、それによって患者様の健康寿命の延伸が期待できると考えています。私は医学部生の頃から社会医学の分野に興味があり、医師3年目からは本学大学院公衆衛生学講座への入学を決めていました。しかし、社会医学においても臨床医としての視点を持つことは研究を進めていくにあたって大事であると先輩医師に勧められたため、初期研修医の間は臨床と社会医学研究の両立を許容してくれる入局先を探していくこととなりました。そのなかで糖尿病・内分泌内科との運命的な出会いがありました。臨床と研究の両立を許容してくれたことも糖尿病・内分泌内科に入局しようと決めた理由の1つです。研究との両立を許容してくれただけではなく、現在では研究を滞りなく進められるように働き方をサポートしていただいています。自らが設計したキャリアパスを受け入れてくれるだけではなく、応援もしてくれる寛容的な医局に入局することができて僥倖の極みです。